今月の言葉 (毎月 1日更新)

 

法然上人 一刀十念御自作座像(西福寺御影堂御本尊)

【令和6年11月】

   

お金で買うことができないもの」


 ある時、お婆さんに連れられて来た幼い女の子が、私に「和尚さん、本堂の金ピカの阿弥陀さんは、いくらするの」と尋ねました。大人はそのようなことを聞きませんが、子どもですから素直に聞いたのでしょう。この子のお家では、すべてをお金に換算して生活しておられるのかとも思いましたが、子供心に正直に思ったのでしょう。テレビの「何でも鑑定団」にでも出せば、値段もつけてくれるでしょうが、そのような勿体ないことはできません。

 

 なぜ勿体ないのでしょうか。阿弥陀さまは、このお寺の「本尊さま」で、本当に尊い方、もっとも尊い方だから、お金に換えられないのです。世の中には、お金に換えることのできない尊い大事なものが沢山ある事を教えてくださっているのです。

 

 この子の家には、お父さん、お母さんがおられる、お爺さんもお婆さんもおられます。みんな我が子大事と思っておられるのです。何があってもこの子だけは守らなければ、と思い育てて下さっています。その思いをお金に換えることはできませんね。

 

 耳や鼻を引っ張れば、痛いと感じます。これが生命です。お父さんお母さんからいただいた大切な生命です。さかのぼっていけばどれだけの生命があったのでしょうか。

 

「先祖の血 みんな集めて 生命かな」

 

 この私は、量り知ることのできない、いのちをいただいて、生き生かされています。そして尊い生命なればこそ、今一所懸命に生きていきなさいと、阿弥陀さまはお示し下さっています。

 

 このように、世の中には、お金で買えない尊いものは沢山あります。どれだけ勉強して、どれだけ賢い人になって、どれだけ偉い人になったとしても、世の中にはお金で買うことができない尊いものが山ほどある、ということがわからないと、本当の幸せにはなれないのです。お陰さまがわかるということが大事ですね。

 

2024年11月1日 

二橋 信玄 (大原山西福寺 第51世)