今月の言葉 (毎月 1日更新)

 

法然上人 一刀十念御自作座像(西福寺御影堂御本尊)

【令和7年1月】

   

「巳年に願う」

 

 正月といえば初詣、もともと正月は盆と同じように先祖の霊を迎えて偲ぶ日でした。そのため正月の初詣も菩提寺へお参りするのです。


 令和七年は巳年(十二支の蛇)。蛇は人との関わりも古来より深く、蛇は信仰の対象でもありました.


 蛇の夢をみるとお金が入る。蛇の抜け殻を財布に入れておくとお金が貯まるとか、抜け殻を箪笥に入れておくと着物がたくさん出来る。このような話が数多くあり、蛇との出会いは吉兆であるといわれています。畏怖も敬愛もされていた縁起物でもあったのです。


 蛇は脱皮し、再生を繰り返すことから、不老長寿の象徴として敬われ、成長の証ともいわれます。


 蛇のイメージはと問われると多くの人は怖い不気味な生物で怪しい雰囲気がありますが、蛇は仏典にもしばしば登場します。弁財天とも結びつく智慧者ともされ、古来より神聖化されてきた生物です。


 「スッタニパータ」という古い経典の「蛇の章」に、「想念を焼き尽くして余すことなく、心の内をよく整えられた修行者は、この世とかの世を共に捨て去る。蛇が脱皮して古い皮を捨て去るようなものである」と説かれています。


 蛇は成長するにつれて古い外皮を脱ぎ捨て脱皮する。仏教の修行者はこの世の煩悩を断ち切り、悟りの世界に入ることとされている。蛇の脱皮はそのようなものだとお釈迦さまは繰り返し説かれているのです。


 「この世とかの世を共に捨て去る」とありますが、この世とは煩悩にまみれた娑婆世界。かの世とは来世(彼岸・悟りの世界)を意味しており、来世を捨てるとは、如何なるところにも生まれ変わることは無く、完全なる悟りの世界に入ることを意味しています。


 法然上人は、西方極楽浄土に生まれる事を請い求め、佛の救いをひたすら信じ、口に南無阿弥陀佛とお念佛を称えよとお示しくださっております。私共も、古い外皮を脱ぎ捨て脱皮するが如く、今日よりは明日へと一歩でも前進するように、成長し飛躍できるようお念佛に精進していかねばなりません。

 

 

「生かさるる いのち尊し 今朝の春」(中村久子)



 何よりも、新年の初参りの心は、おかげさまで新年を無事に迎えることが出来ましたと、感謝の心で合掌お念佛を申し上げる事が大事です。

 

 

2025年元旦 

二橋 信玄 (大原山西福寺 第51世)

 

 

  

 


2021年(令和3年)10月より、毎月1日に掲載しています。